核家族の最大の良いところは周囲の人に干渉されることなく生活できることです。しかし、二人だけ、家族だけの楽しい生活が、一歩間違うと危うい状態になってしまいます。核家族の短所として次の4つが上げられます。

1)核家族のもろさ(家族の孤立化)

戦後の日本の核家族形態には二つの意味があると言われています。その一つに核家族の核のもつ意味は、夫と妻の心が核融合して一体になり、より強い結びつきの夫婦を中心に家族を形成すると言う考え方です。
二つ目は家族と言う小集団の中には核(中心となる者)なる中心が存在しそれを中心にバランスをとりながら機能している。との考え方です。
核家族化によって多くのご夫婦は強い絆のもと幸せを享受されています。一方で、家庭が崩壊してしまった不幸な家族も少なくありません。核家族形態の最大の弱点は「もろさ」です。
核家族の弱点である「もろさ」を周りの大人は知りつつサポート体制が十分でないのは、自分たち夫婦の生活を他人に干渉して欲しくないとする考えが強いのが一つの原因となっています。それを周囲も察しなるべく干渉しないように配慮し、無関心をよそおっています。
このような状況の中で夫婦・家族間に問題が出たとしても、修復不可能な状態になって初めて問題が表面化するため周囲の縁者等からの助言・援助が有効なものとならないのが現状です。
今の核家族形態は、家族が孤立化しやすく、問題が潜在化してしまい顕在化した時は支援がしにくくなっているのが現状ですし、大きな短所です。

2)人間関係の希薄さです

親戚縁者との関係の希薄化、近隣との関係の希薄化、兄弟が少ないことによる人間関係の希薄さが、人間の情緒的な結びつきを弱くしており、人の痛みや辛さが理解できない人が増えてきています。

また、人間関係で他人とあまりもまれていないため協力、競争、我慢、他者感覚、自己主張の仕方を学ぶ機会が少ないことから人間関係で問題が起きたときの問題解決に時間がかかってしまったり、他人に手を借りることになってしまいます。
さらに、血縁関係間による相互扶助の支援も崩壊しており、三世代家族では、家族が病気、身体的障害を負う、死亡、等で生活が困窮してもお互いが助け合うことにより危機状態を乗り越えることができますが、核家族で孤立した状態での関係では、難かしくなります。
集団生活で必要な「場の空気を読む」ことが苦手で他人の心の機微を感じ取ることができないのも核家族化の一つの問題点です。それが次のような夫婦関係に現れています。

結婚は異質なものを受け入れていかなければならないことから相手の気持ちを察し、我慢したり折り合いをつけて何年間も関係を維持していくことを求められています。これが上手くいかずに結婚早期の離婚が増えている遠因でもあります。結婚とは双方相当な努力の積み重ねが必要となります。

3)心の喪失であります

戦後の日本の経済的成長はめざましいものがあり、国民総中流意識の中豊かな生活を享受してきました。その根底にある考え方は、営利主義や拝金主義の思想でありそれを増幅させてきました。物、お金を中心に発展してきた社会は、知らず知らずのうちに人の心や人間性が大切にされない社会になってしまいました。このような社会を心配され既に昭和46年に奈良の薬師寺の高田貫主が「物が栄え心が滅びる。」とおしゃっています。現在、経済が停滞しいろいろな社会問題が起きる中その心が滅びかかってやっと「教育問題等」に目をむけ真剣に取り組むように社会が動き出したように思います。

4)男女の寿命が延びました。

寿命が延びたことにより夫婦生活が長くなりました。日本人の寿命は、女が85歳、男が79歳となり、50年以上の夫婦関係を維持していかなければならない時代になってきました。これは大変な努力を双方に求められています。
単に好きだから一緒に居たいからという感情だけでは、生涯この関係を維持できるのかを真剣に考えていかなければ幸せな生活は送れない時代になってきました。
寿命が延びて夫婦生活が長期間になってきたことなどを前提に、これから結婚しようとする人たちに家庭・家族のあり方や、夫婦・家族の絆、子育て、また経済状態の把握、さらに、人生における危機管理等はどうあるべきかを想定したライフプランを立て、夢のある健全な家庭生活を末永く営んでもらいものです。